刑事責任としての過失

警察のいっている「過失」は刑事責任についての過失だと思われます。
刑事責任についての過失の有無は過失運転致死傷などの犯罪が成立するかどうかという点にかかわってきます。

すなわち,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」5条は「自動車の運転上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は七年以下の懲役若しくは禁固又は百万円以下の罰金に処する。」と規定しており,自動車を運転して過失により人を死傷させると過失運転致死傷罪という犯罪になると定められています。以前は業務上過失致死傷とされていたものです。

警察の仕事は犯罪行為を捜査し,証拠を確保して刑事裁判の準備を整えることですから,警察官は運転者に刑事責任としての過失があるのか,つまり運転者につき犯罪が成立するのかに関心をもっているのです。

民事責任としての過失

保険会社のいっている「過失」は民事上の責任についての過失です。
民事上の過失の有無は損害賠償請求をするときに減額されるかどうか,また相手の損害を賠償する責任があるかという点にかかわってきます。

民法709条は過失によって他人に損害を与えた場合の賠償責任を定めており,また民法722条2項は被害者に過失があった場合の過失相殺について定めています。

これらの二つの過失は目的が異なっています。
刑事責任としての過失は罰を与えるにふさわしいだけの責任があったかという観点で判断するのに対し,民事上の過失は損害の公平な分担という観点が重視されています。

二つの過失はリンクしているわけではなく,刑事上の過失がないからといって民事上の過失もないとは限らないのでご注意ください。