後遺障害慰謝料と逸失利益

後遺障害の等級が認定された場合,障害が残ってしまったために受ける精神的苦痛に対する慰謝料(後遺障害慰謝料)と,将来の収入がダウンすることに対する補償(逸失利益の補償)を受けることができます。

慰謝料には傷害慰謝料(入通院慰謝料)というものもあります。
傷害慰謝料は事故で怪我をして苦痛を味わったこと,通院などで時間をとられたこと,怪我のせいで本来できた活動ができなかったことなどの精神的苦痛を賠償してもらうためのものです。

これに対し,後遺障害慰謝料はもともと健康だった部分に障害が残ってしまったことについての精神的苦痛を賠償してもらうものです。

二つの慰謝料は別のもので,それぞれ支払いを受けることができます。

後遺障害慰謝料の算定方法

後遺障害慰謝料は等級に応じて目安となる金額が決められています。

交渉の段階ではこの目安を基準に話合いがされます。

目安はあくまで目安ですから,その基準以上の額を請求することもできますが,話合いで保険会社が基準以上の額を認めることはあまりないので,裁判をする必要があります。

逸失利益の算定方法

逸失利益は

基礎年収額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)

という式で計算します。

基礎年収額の決め方

通常は,事故前年の年収を基準とします。

労働能力喪失率

実務では通達を基にされて作られたという労働能力喪失率表を使って算定します。

この表では後遺障害の等級に応じて労働能力がどれくらい失われるかという率が決められています。

裁判では個別の事情によってこの表より高い率が認められることもあります。

労働能力喪失期間(ライプニッツ係数)

労働能力喪失期間は原則として症状固定の日から67歳までです。

むち打ち症の場合は12級で10年程度,14級で5年程度に制限されることが多いとされます。

実際,保険会社との交渉では14級なら3~5年程度になることが多いと思われます。

計算をするときは労働能力喪失期間そのものではなく,これに対応するライプニッツ係数というものを用います。

なぜ,労働能力喪失期間をそのまま使わないかというと,損害賠償は一括で払ってもらうのが基本ですが,そうすると将来少しずつ受け取るはずの所得を先立って全額受け取ることになります。
その場合,事故に遭わなかったときよりも,先に受け取った金額の利息分につき被害者は得をしてしまうということで,その分を減額するため,ライプニッツ係数というものが使われます。

5年のライプニッツ係数は4.3295で,10年のライプニッツ係数は7.7217です。

これは年5%の利息を得ることが前提となっているのですが,現在の金融状況で年5%の利益を得ることは困難ですから,だいぶ損なはなしだと思います。

具体例

例えばむち打ち症で14級の場合,慰謝料は110万円が目安です。
逸失利益は基礎年収額×14級の労働能力喪失率5%×3~5年のライプニッツ係数で計算できます。

年収400万円の会社員,年齢30歳で,労働能力喪失期間を4年として合意した場合,

逸失利益は400万円×5%×3.5460=70万9200円となります。

慰謝料と合わせると180万9200円が後遺障害に関する補償部分となります。

ちなみに自賠責の基準では,14級なら慰謝料と逸失利益をあわせた総額で75万円までと決まっています。
自賠責の支払いは任意保険に優先されるので,75万円はもらえるものとして,さらに不足分を任意保険に対し請求できるかという問題ですが,保険会社は自賠責からでる75万円で提示してくることがよくあります。
(詳しくは 自賠責保険と任意保険 をご参照ください。)

上記例なら100万円以上の差があります。
後遺障害に関する賠償金は弁護士が入ることで大幅な増額が期待できる部分です。
保険会社の後遺障害に対する補償は,本来被害者が請求できる額に比べ低額であることが多いためです。