事前認定と被害者請求

後遺障害の申請方法には2種類あります。
ひとつは相手の任意保険会社に手続きを代行してもらう方法(事前認定),もうひとつは自分で手続きをする方法(被害者請求=16条請求)です。

<後遺障害の申請手続き>

二つの後遺障害申請方法被害者請求と事前認定

相手の任意保険会社に手続きを代行してもらう場合でも,後遺障害の有無を判断するのはあくまで損保料率機構です。相手の任意保険会社が判断するわけではありません。

自分で手続きをとる場合,弁護士や行政書士に手続きを代理・代行してもらうこともできます。当事務所でも手続き代理をすることができます。

どちらの方法をとる場合でも,後遺障害の診断書はご本人が主治医に書いてもらう必要があります。

どちらの手続きが有利?

当然ながら,被害者からすれば後遺障害を認めてもらいやすい方の手続きをとりたいと思うのが普通ですが,どちらの手続きをとるかによって認定結果に差がでるのでしょうか。

結論からいえば,差がでることもあるといってよいでしょう。

被害者請求の場合,提出する書類はこちらで選択できますので,なるべく認定が認められるように書類を選んだり,追加したりすることができます。

一方,保険会社が行う事前認定の場合,どのような書類を保険会社が提出しているかはこちらではわかりません。通常は必要最小限の書類を提出していることが多いようです。
また,保険会社側がこちらに不利な書類を追加していることも実際あります。例えば,医師に医療照会をかけたり,顧問医の意見書をつけて,認定が認められづらくされるケースもあります。

ただ,事前認定で後遺障害が認められることも全く珍しくはありませんので,事前認定だから後遺障害がとれないということはありません。
あくまで,可能性として被害者請求の方がよかったといえるケースがある,というくらいのものではないかと思います。

それとは別に,被害者請求のメリットとして,示談前に自賠責からの支払いを受けることができるという点もあります。
お金に困っているような場合は先に自賠責の支払いを受けて,示談交渉や裁判をじっくり行うというのも検討した方がよいでしょう。

認定結果に納得いかない場合は異議申立ができる

後遺障害の申請をしたが非該当とされた場合,又は等級はとれたが思ったより低い等級になってしまった場合,異議申立の手続きが用意されています。

異議申立には2種類あって,一つは最初の判断をしたのと同じ組織(損害保険料率算出機構)に異議を申立てる方法と,もう一つは別の組織(自賠責保険・共済紛争処理機構)に異議を申立てる方法があります。

どうせやるなら別の組織に判断してもらうのがよさそうにも思えますが,そうともいえません。

というのも,一つ目の方法は何度でもできるのに対し,後の方法は一度しかできず,しかも,後の方法をとると基本的に一つ目の方法はとれなくなってしまうのです。

一つ目の方法は同じ組織が異議を判断しますが,最初に認定をする調査事務所と異議を審査する部署が違えば異なる結論がでることもあり得ます。実際,異議が認められるケースもありますので,十分検討の余地があります。

一つ目の方法でダメなら後の方法をとることも考えます。こちらの方法で異議が認められるのは,異議申立のあったもののうち1割程度とされています。

自賠責共済にご用心?

後遺障害の等級認定をするのは上記の通り損保料率機構なのですが,相手の加入している強制保険がJA共済の場合は,例外的にJA共済連が後遺障害の等級認定をしています。

問題は,この共済の等級認定方針が損保料率機構のものと微妙に異なっている可能性がある点です。

実際,共済だと後遺障害が認められにくいという話も耳にします。

相手がこういった自賠責共済に加入している場合は,異議申立を考慮にいれておいた方がよいかもしれません。

異議がダメなら最後の手段は裁判

以上で後遺障害の認定手続きについて述べてきましたが,これは本来自賠責保険の支払いを受けるための手続きです。

ただ,交渉段階では保険会社もその結果を尊重しますので,等級認定の結果をベースに示談交渉がされます。
もし思ったような等級がとれなければ,交渉段階ではその等級を前提とせざるを得ません。

どうしてもその等級に納得できない場合は,最後の手段として裁判をすることができます。
裁判所は後遺障害の有無を裁判所に提出された証拠にもとづいて判断します。裁判所は自賠責の等級ももちろん参考にしますが,その結果に拘束されることなく,独自に判断をすることができます。
したがって,自賠責の等級の結果を覆せる可能性もあります。裁判で結果が出たらもちろん保険会社も従わざるを得ません。
ただし,裁判ではもともととれていた等級より下がってしまうこともあるので注意が必要です。