保険会社の提示は低額

事故の相手に任意保険会社がついている場合,治療が終了すると保険会社が賠償金の提示をしてきます。

この提示額は保険会社の内部基準で算出していますが,本来の賠償額にくらべて低額の提示となることが多いようです。

自賠責基準と任意保険基準

示談金・賠償金を計算する方法としていくつか基準が存在します。

自賠責基準

ひとつは自賠責基準です。
自賠責基準は自賠責保険が保険金を支払うときの計算方法です。(自賠責相手に裁判をするときにはこの基準はつかわれません。)
この基準は自賠責法16条の3に基づいて政令で定められているものですから,自賠責保険会社はこれに拘束されます。

任意保険基準

任意保険会社は賠償金の提示をするときに自社基準に従って計算をしてきます。これが任意保険基準です。

任意保険基準は一応監督官庁に届けられていますが,法的な根拠をもったものではないので,被害者がこれに拘束される理由はありません。

この基準によると,多くの場合,上記の自賠責基準に近い金額となります。つまり本来の賠償額より低額になる場合が多いということです。

自賠責の金額と同じなら,任意保険会社は自己負担がなくなるわけです。その仕組みはこちら

あからさまなケースだと,自賠責の支払い上限である120万円を超えた部分を,「調整額」といった項目でカットしてくることもあります。

また,自賠責の範囲内だと,過失が付くようなケースでも過失0で扱ってくれているケースもよくあります。
これは,自賠責は7割未満の過失だと過失相殺をしないためです。

本来の賠償額とは

以上の基準は必ずしも本来の賠償額を導くものではありません。
自賠責基準は最低限の補償をする強制加入の保険ですから,損害の全額が賠償されるとは限りません。最初から最低限の損害額を計算するための基準なわけです。
任意保険基準も自賠責基準と似かよったものですが,当然ながら営利企業である保険会社側の思惑の混じったものです。

「本来の賠償額」というのは裁判をしたときに認められる賠償額を指します。
権利は目に見えないので,自分がどのような権利をもっているのか容易にわかりませんが,裁判をして認められるものこそ自分の正当な権利です。

弁護士/裁判所基準

交通事故の場合,裁判所は似たような事件を大量に扱っています。
そのため,ある程度基準を設けて事件処理をすることが効率的となります。実際は,基準無しでは処理不能といった方がよいでしょう。

基準の必要性は効率のためだけではありません。同じような事故の賠償額が裁判官によって全然違うということになると公平感が失われます。したがって,公平の側面からも一定の基準があった方がよいことになります。

そのような理由で,交通事故の賠償については定額化,基準化が進んでおり,その基準も裁判所から陰に陽に発表されています。
これが弁護士/裁判所基準であり,本来の賠償額に一番近いものです。

この基準もあくまで基準であって,絶対のものではありません。個別の事件によって当然事情は違いますので,本当のところは裁判をやってみないとわかりません。そのため,あくまで本来の賠償額に近いものという表現にとどまりますが,それでも非常に大きな影響力をもっています。

現在,この基準として最もポピュラーのものは「損害賠償額算定基準」という書籍で,通称「赤い本」と呼ばれるものです。

この基準があるおかげで,裁判前から賠償額の大方の予測がつくようになっています。
したがって,この基準を前提とした示談交渉も可能になったわけです。

弁護士の役割

以上が弁護士が交渉するとなぜ示談金が増額するかという仕組みです。

弁護士は示談金額が本来の賠償額に近づくように保険会社と交渉します。
また交渉で解決できない場合は裁判によって権利を実現します。

自賠責保険も任意保険も損害を全て補てんしてくれない。

自賠責保険と任意保険の関係については 自賠責保険と任意保険 をご覧下さい。

具体的にどれくらい増額するかは 弁護士に頼むと実際にどれくらい賠償額が上がりますか? をご覧下さい。